スポーツ障害予防コラム

スポーツ障害について

 スポーツ活動によって生じる“ケガ”は,1回の大きな外力により急進的に起こる『スポーツ外傷』と微細な外力や疲労が蓄積した結果として起こる『スポーツ障害』の2種類に大別されます。前者は,競技特性によっては不可抗力的に生じる場合が多いですが,正しいコンディショニングによっては予防が可能な場合も少なくありません。一方の後者に関しては,運動後の正しいセルフケアや選手個々の身体機能に対する継続的なコンディショニングにより必ず予防ができると解釈されています。

成長期におけるスポーツ障害について

 1)成長期における骨の力学的脆弱性

  図1に示すように,成長期の骨には骨端線というものが存在し,骨端線の先端は骨端部,そして骨端部

 は骨端軟骨に覆われている骨構造となっています。成長に従い骨端軟骨の中心部から骨(骨端核)が成

 熟し,骨端線が徐々に消失して骨端部全体が骨組織に置き換えられ,成人の骨へと成長を遂げます。

  成長に際して,骨端部や骨端線の存在は大変重要な役割を担いますが,成長段階においては力学的に

 脆弱であり,外傷や障害が生じやすい部位として捉えられています。

 

2)成長期における筋の柔軟性低下

  成長の速度には個人差がありますが,一般的に女子は10歳頃,男子は11歳頃から成長が急速化すると

 され,概ね小学校高学年に相当します。遅い場合では,中学23年生頃から急速化する選手も少なくあ

 りません。

  つまり,この時期は骨の成長が著しく,身長が急激に伸びる選手が多く存在しますが,この骨の成長

 に対して筋肉の発達が追いつかず,図2に示すように相対的に筋肉が短縮してしまいます。その結果,筋

 肉の柔軟性は低下し,いわゆる“身体が硬い”という選手が多くなり,『成長痛』を誘発しやすい状況

 に陥ります。

   

        図1 成長期の骨構造

図2 成長期における骨の成長と筋肉の関係


成長期のスポーツ障害を予防するために

先に述べたように『スポーツ障害』は運動後の正しいセルフケアや選手個々の身体機能に対する継続的なコンディショニングにより必ず予防ができると解釈されています。つまり,選手個々が障害を予防するための意欲や正しい知識を持つ事が大変重要であると共に,指導者側も十分なウォーミングアップやクールダウンへの配慮等もスポーツ障害予防には極めて重要な要素であると考えています。

具体的には,各スポーツの競技特性に応じ,多用する筋肉のストレッチは欠かさず行う他,アイシングや交代浴を励行し乳酸等の疲労物質除去効率を上げ,常に筋肉の柔軟性を保つ事が成長期のスポーツ障害を予防するための近道と解釈しています。

各症状及びスポーツ障害別の予防法については,今後のコラムをご参照下さい。


各症状に対する障害予防コラムはこちら

  ■“分裂膝蓋骨”に対する予防方法

  ■“腸脛靭帯炎”に対する予防方法

コンディショニング方法のコラムはこちら